2013年度卒業設計・論文!

こんにちは。M1くらいしです。

2月2日に卒業設計公開講評会が終わって、2013年度の卒業設計がひとまず終了しました!
B4のみなさんはお疲れ様でした。

青井研究室の成果を報告しようと思います。(個人的な感想も含む)

まずはカサマキの作品から…

『都市の縫合−"あいだ"に生まれる新しい公共の場−』〈11選入賞_佳作〉

↓最終講評会で吉村靖孝先生の質問に答えるかさまき

杉並区と武蔵野市の境目に位置する敷地に、保育園・高齢者施設・医療施設・役所・学童・商店といった多様なプログラムを集約した作品。
スタディ段階からコツコツと条件を整理し、空間的にも実直に設計を進めていました。(今回の卒計の中では特に真面目にスタディを積み重ねた力作!)
問題設定としては、この敷地を境に都市計画的な扱いも切り替わるという現状に対して、杉並区と武蔵野市の抱える問題を協働で解決していこうという新しい公共の提案です。
空間としても多様なプログラムが共有できる場を出しあい、フレキシブルに室を使い分けることを目的としていました。
講評会での質疑の中では、問題設定にオリジナル性があるものの、建物の空間構成で実現していることが見えにくいといった指摘があり、建築家として受動的である姿勢が批判されていました。
そこで、パッシブな姿勢が逆説的に笠巻が理想とする建築家像であるのかどうか…この部分を客観的に捉えることができていれば評価も変わっていたかもしれません。
客観的に見ても、問題設定から空間構成まで熟考されており、出来上がったプランも魅力的な場がいくつも実現されていたと思います。


次は、いくこ!

『もうひとつの帰る場所−500年の村の続きの風景−』〈11選入賞_佳作〉

↓模型を使って力説!たのもしい

千葉県市原市にある「月出」という限界集落の持続方法についての提案。「市原アートミックス」というアートトリエンナーレが開催されるために現在準備作業が進んでいる村であり、そこにアーキテクトとして介入することで、村の魅力を具現化し、継続的な賑わいを創出するために、廃校になった小学校や古民家を対象にし新たな核を設計しました。
何度も現地に足を運び、古民家の実測を行うなど、ローカルな場所性を丹念に読み取った上での提案がなされています。設計においては村全体の構造を読み取っており、風の流れ・防風林の位置・人工的に植林された杉林・村のアイデンティティである生け垣が連なる風景などをデザイン要素として抽出しました。
講評会ではまず、核となる小学校・プール・古民家という三要素を繋ぐ大屋根の存在感が弱いとの指摘と、この提案が限界集落の問題に対するプロトタイプであるのか、それともサイトスペシフィックな解答であるのかという質問がありました。
それに対していくこ自身としては出来る限り大袈裟でない手法で介入し村の構造を徐々に変換していく事を想定しての決断であった。竹や人工杉林に関しては国内各地の集落で同様な問題があるという事に関しては否めないが、この村に通い詰めたことから見えてくる理想像を提示しており、リアリティが伴った素敵な作品だと思います。


続いて、りゅうくん!

『Loop Library〜山手線図書館〜』〈次点〉

↓いつもスマートなプレゼンをするりゅうくん

山手線の駅のホームの脇にリニアな図書館を隣接させ、電車から直接その建物にアクセスする事を可能にして山手線全体で一つの図書館が完成するという提案。
昨今の紙媒体の書籍離れに対して疑問を持ち、本の魅力や、図書館の存在をより身近なものにしようという問題意識のもとでの計画でした。
電車から直接アクセス可能という事は、一両あたり4箇所の出入口があり、11両編成ということで合計44箇所のエントランスをもつ図書館となり、今まで見たことの無い異様な建物が立ち上がりました。この異様な図書館が駅のホームに隣接する事で、駅自体の性格も刷新する可能性のある計画であり、本の魅力というノスタルジックなイメージにはとどまらない面白い作品でした。


あっこ!

『都市・治具・身体−制度化が生み出すにっちを生きる術−』

↓ポスターセッション中も笑顔を忘れないあっこ

スケートボーダーが道路のちょっとした段差を滑走するように、人々がボードのような特殊能力を身につける事で都市の様々な要素の見え方が変わり、それによって普段は何でも無いような場所も使われ方が変化するという事を前期から勉強していました。こうした都市の隙間(=にっち)の使い方を人々に示すことで、そのにっちの存在を気づかせ、にっちの再生産を創出しようという提案。
都市のいたるところで制度の元につくられた空間が広がり私有化され、それに対して無意識的な(従順な)人々に対してささやかな治具を設置する事である種のスクオッターを誘発し小さな公共性を発見します。
人々にこうしたにっちの存在を気づかせる事でその後の連鎖的な再生産を促すというイメージがあり、都市の中の身近なパブリックスペースを取り戻すべきであるという意識は的を得ていると思うが、提案する治具としての建造物がささやか過ぎたために評価を得にくかったのだろうか。ジレンマですね…


ジョウ!

東京水辺ライン 日本橋ターミナル計画』

↓ボーっとしない!w

日本橋の下に位置する水上バス駅を含めた、日本橋川の親水空間に対する提案。日本橋川の上には首都高が覆いかぶさり、川沿いの建物はどれも裏を向けており、そんな暗い水辺空間に対して問題を感じていました。東京都の条例の規制緩和によって水辺の護岸に床を架けて商業行為を行うことが許されるようになった事と、オリンピックを起爆剤としてのインフラ改修、そして護岸壁の耐震問題といった現代的な課題に目をつけており、それを踏まえた上でのケーススタディ的な提案です。
敷地に選んだ場所の川沿いに建つN証券旧本社ビルの低層部のコンバージョンというかたちで水上バスターミナルや親水・歩行空間を設計しましたが、このビルの構造的・歴史的価値に対しての意識が弱く、出来上がった躯体が唐突に挿入されたように見えてしまうところが惜しかった。
しかしながら、水辺空間に着眼し、土木的な構築物と歴史的な建物の保存に関して取り組んだチャレンジングな問題設定を評価してくださる先生もいました。


最後に、卒業論文を提出した秋山くん!

『防災建築から見る蒲田駅東西駅前地区の戦後復興過程』

↓緻密に地図を分析をした成果。きれい

蒲田駅周辺の1930年代から1970年代までの都市空間形成過程を防火性能と建築類型から観察している。
駅の東口と西口で復興過程が異なっており、共同ビルへの建替えや区画整理が行われるプロセスを駅周辺で面的に追うことで、現在の恒常的都市空間へどのように変化してきたかを考察できる。
火災保険特殊地図を収集し、建物構造種別に色分けし、さらにコツコツ立体化させる作業を行ったことで視覚的にも都市空間の変化が見てとれるようになっている。


とにもかくにも、みんな無事に提出することができて良かった!!(先輩方はバスターコールお疲れ様でした…w)
最終講評会に残ったいくことかさまきの作品はもっと評価される可能性が十分にあったはず・・・
悔しいところだが、それぞれ弱点や反省点が見つかったようだし、各人が今後さらにステップアップするための足がかりとして頑張ってください!!


くらいし