2014年度修士論文の成果報告!

この春、青井研の院生がまた4人卒業することになりました。
ここで今年度も本当に優秀だった先輩方の修士論文について、
2月19日の修士論文発表会と東京建築コレクションをふまえて、内容・成果を報告させていただきます。

まずはかんこさん。
『神代雄一郎のデザイン・サーヴェイ展開過程に関する研究−コミュニティ論の形成と発展に着目して−』
1950−1970年代を中心に活躍した建築評論家の神代雄一郎による図面資料群と文献資料群を網羅的にまとめた研究です。
1967年から神代雄一郎が行ったデザイン・サーヴェイの膨大な図面資料を整理し、文献資料やインタビューから当時の神代雄一郎がどのような関心に移っていったかを網羅的に読み解いていくという内容でした。


ほんとに膨大な量の資料をまとめあげたことは、明治大学の歴史的資料として有意義なものとなっており、神代雄一郎の当時考えていた思想や取り組みを再評価することにつながっていると、発表会でも評価されていました。

巨大建築に対してそこの地域の活動やスケール感をいかに作っていくのかという神代雄一郎のねばりや葛藤が見えてくるこの研究は、個人的な興味も相まって毎回のゼミがとても面白かったです。

次にくらいしさん!
くらいしさんの論文は今年の東京建築コレクションで見事、千葉学賞を受賞しました!おめでとうございます!

『東京都心部における土地所有構造からみた戦後の都市組織変容過程−神田地区(錦町・美土代町・司町)を事例として−』
これは神田の4街区を対象としており、ここは江戸期には屋敷地と町人地の境になっていた場所でした。
土地所有者の経済状況の偏差によって空間構造がどう変わっていくのか、また戦後のGHQによる東京の「土地の商品化」が与えた影響を分析することで、土地の所有というものが都市構造にどう影響していったかを明らかにするといたような内容でした。



発表会では\凄い量の分析と図で目まぐるしいプレゼンをされていましたが、土地の所有構造から街の移り変わりを見ていくという視点と、法制度の推移などといった社会背景と個人的な経済状況や欲求を一つ一つ辿っていった情報量と分析量はさすがくらいしさんといった感じでした。

次にあやなさん!
『旧東京市縁辺部における不良住宅地区の発生/分布/変容 −近代日本における大都市膨張の一端として−』
戦前期に東京に点在していたスラム(不良住宅地区)がどのように分布していたか、またその空間はどのように生まれ、どのようなカタチに変化していったかを見ていく研究でした。



これは戦前に作られた火災保険特殊地図という資料を使い建物レベルで一つ一つプロットしていくといったもので、それらをカード化していった結果、青井研史上、最もページ数の多い論文に仕上がりました。

東京建築コレクションでは次点となっていましたが、
発表会でもその作業量と今までほとんどなされてこなかったスラムの分析はとても評価されていました。

最後にあゆむさん。
あゆむさんの論文は東京建築コレクションのファイナリスト選出、建築史交流会でも優秀賞に選ばれました!
『武蔵野段丘上の短冊状新田村落にみる大都市近郊の郊外住宅地形成−先行する短冊状地割と土地利用形態の継承・再編−』
農村地帯だった吉祥寺地区にみられる短冊状の地割は、大正期の郊外への宅地化の影響を受けどのように変化していったかを辿っていく研究でした。


先行する地割の形態や用途配置、土地配分が私鉄の開通とともに宅地として変容していく過程を明らかにし、そこから見えてくる宅地形成の諸条件を捉える。一つの短冊状の土地が分割される時に建物がどう建つのか、いかに道を通すか、そこに加わる内的要因はどんなものなのか。郊外にある農地の特徴的な街の形態が社会的需要にどう応えていくのかが見えてくるのが面白いなと感じました。

発表会や東京建築コレクションの時も一つの短冊状の土地が細分化される際に、道がいかに通されるのかという点に質問が集中していました。

今年の修士論文もとても論理立ても構成もしっかりしているし、内容も面白いものでした。
東京建築コレクションの審査会のときに、くらいしさん、あゆむさんの論文が「青井研の〜」でくくられてしまっていたのが印象に残りましたが、自分としては一つ一つの論文に先輩たちの個性が出ているように思うし、「青井研の〜」に見えるのは先代の先輩方の論文の蓄積をしっかり勉強したからこそだと思います。

今年卒業していく先輩方はとても優秀なスポンジって感じでした。なんていうかみんな共通して引き出しがすごい!
それぞれが凄く個性的で違った価値観で凸凹してて、提出間際も、とっても余裕な2先輩ととってもあたふたしてる2先輩で、でも全員書いてる論文クッソ面白くて、全部書き終われーーーって心の中で思ってました。
みんな自分が言う必要もないくらい社会で活躍していくと思いますが、どこに行っても頑張ってください。
先輩方と同じような引き出しを作れるかどうか分かりませんが、自分も自分なりにたくさん引き出し作って面白い価値観が生み出せるように頑張ります。




B4 ゆげた