2014年度の卒業設計・論文!!

今年度の青井研究室B4の卒業設計・論文について、成果報告です!
今年も面白い調査やアイデアが色々あったので、僭越ながら、長めの報告やります(個人的な感想含む)。

卒論が3人で例年より少し多かったので、まずはこちらから。

なんと…なんとあのシホが菊池賞を受賞しました!おめでとう。
『 梨農業の観点から見た稲城市の景観変容に関する研究−土地利用と直売所に着目して−』

これ何の小屋だかわかりますか?
妙に小さいし、あまり使われていない様子…庇の色がヒント…


実は、毎年10月頃になるとこの小屋が突如開いて梨を売る為の直売所になるんです!
東京稲城市の、多摩川に程近い場所では戦前からルーツのある梨農家が集まっており、住宅地開発が増えた現在でも多くの農家が梨の栽培を続けています。彼らは梨ができた時に農協などに出荷する物の他に、この梨小屋で近隣の住民に向けて販売するのです。
この梨小屋は幹線道路沿いなどで多く見られるのですが、これがとにかく可愛らしいのと、よく見ると大きさも数パタンあり、プランも色々違いがあります。


これらを実測しつつ、インタヴューから梨農家の方々の経営形態を明らかにし、地区の歴史的変遷と合わせて類型的に成果をまとめ上げた論文でした。
この論文はシホじゃなければここまでまとまらなかった気がします。色々含めて楽しませてもらいました笑


続いてマルちゃん!こちらは惜しくも二番手の評価でした。
『 千葉県習志野市・大久保学園商店街の変容過程―軍郷から大学街への転換とその後―』
千葉県習志野市を対象に、軍都から学園都市へとモードが変化した街について、その転換によって商店街の店舗内容がどう変わってきたのかという視点から明らかにしました。地域環境が変化したことを敏感に感じ取って対応する商店街のタフさが浮かび上がりました。
プレゼンが群を抜いて良かったですね。先生もベタ褒め。


ムック!
『SOHOの動向と生態 上野5丁目を事例とした研究 −貴金属関連企業に着目して−』
東京御徒町駅周辺では、最近高架下の再開発で手工業の製品を売る店舗が増えた事は知っている方も多いと思いますが、御徒町には戦前から職人が集まるルーツがあり、終戦直後にはアメリカ軍から時計などの横流し品が流通するようになって貴金属加工の職人が多く集積しました。
ここ一帯では、貴金属の問屋から、加工や卸売りといった関係する企業がチャリンコネットワークで結ばれており、このような小さな工場群はバラバラと場所や業種を替えながらも、今でも御徒町周辺には多くの貴金属業者が残っています。この生態系をインタヴューなどから明らかにしました!


後輩たちが良い評価をもらっているのを見ると、修士論文の提出が迫っている我々M2は、なんだかケツを叩かれているような…そんな気分になったりしました。
(今度インデの使い方教えてもらいたい)




さてさて、続いて卒業設計の部。

ゆげた!
『街は誰がつくるのか―六角橋の生存戦略―』

↑ポスターセッション中に仙台DLの登録に追われていたとは…ちょっと抜けているのでは笑

対象にした横浜市六角橋商店街は、ちょっと古びた小ぢんまりした商店街ですが、コアな常連客が集まる場所。しかし、ここには道路拡幅計画が存在しており、放って置けば商店街の半分が削ぎ落とされてしまう宿命を抱えています。
そこで、この商店街のアイデンティティを残し、同時に前面道路拡幅によるポテンシャルを活かし切ろうという揚棄的な解法を提案しました!
クルクル折りたたむように店舗をひとつずつ組換えて立体化する手法が鮮やかで、同時に想定される要求をひとつひとつ抑えていった実直な作業量は流石でした。

これがギリギリのところで逃げ切って建築学科賞を受賞しちゃいました!やったー!


↑今年のゲスト審査員の一人は大西麻貴さんでした

↑感極まって何を言っているのかよくわからん

「自分が知らないところで街ができていく」ことに素朴な疑問をずっと持ち続けていたのが印象的でしたが、今回の提案のように、住人側に立って考えながらも、どこかに超越的な視点を保っているというスタンスを体現してみせたことが強かったのかな。おめでとう!


こみやま!佳作
『“ファブリック”としてのキャンパス―大宮東口の10本の通り―』

↑ボード右側のリサーチ編が充実

↑ゲスト審査員の新谷先生との応答

埼玉県大宮駅東口駅前には、鉄道と中山道に挟まれたところに、各々スケール感が異なる商店街が9本あります。駅前再開発の話を跳ね除ける程に地場が強い場所であり、通り毎に業種や営業時間が異なるのが特徴。
この場所に対して、隣接するかつて百貨店だった大型建物をブチ抜いて大学施設を挿入し、大学生や研究者があつまる新たな10本目の通りを設計しました。
学生が商店街の中でゼミ活動を行う仕掛けづくりに悩んでいたようですが、スタディ中に発見した「宇宙の缶詰」的なアイデアが面白かった。10本目の通りの中に、他の9本それぞれの店のタイプやスケールを真似したかたちをつくり、そこで学生が活動できれば、その振る舞いが転写されていくのではないか?ということ。しかし、これは理論上のコンセプトであって、実態部分の設計が一歩及ばずでしたね。


続いてかおる。こちらは惜しくも次点。
『《現在》への重層―〈都市の駅〉としての村野藤吾横浜市庁舎の再生計画―』

↑直前までひゃーひゃー言ってたのに楽しそう

横浜スタジアムのすぐ横に建つ現横浜市庁舎のコンバージョンがテーマ。市庁舎機能が移転した後に、大桟橋へも繋がる都市軸上にあるこの一帯をどのように価値付けするのか…言わば周辺を含めた方向転換の最初の一手。また、建物自体が村野藤吾設計であり歴史的価値も高い。
そこで示した提案は、すぐ隣の関内駅を拡張し、建物の低層部を駅のコンコースにしてしまう大胆なものでした。さらに建物上層部は村野による特徴的な意匠を活かしたホテルを設計しており、大量のヒトを送り出すポンプとラグジュアリーな空間を吹き抜けを介して併置した構成。駅+ホテルというタイプに新規性は無いかもしれないが、それをコンバージョンでつくりあげる事による齟齬がパースに表れていて面白かったと思う。
また、意匠的特徴に応じて空間配列が決定される点に、歴史的建造物の動的保存というコンバージョン手法に対する提案も含まれているのだが…今ひとつ伝わらなかったかな^^;


もんま。
『集落のしつらえ―風景に編み込まれた都市と地方の新しい関係性―』

↑喋りが達者なんだな

地方の過疎化を考えたい。何とかして都市部の人を呼べないかなー。
そういえば結婚式って料理人、カメラマン、友人、親族…などなど沢山人が集まるよなー。
しかも今の結婚式ってだんだん形式性が弱くなって色んな場所でやってるじゃん!
という流れで、仙台市の中山間部の小さな集落を対象に、そこで結婚式場と宿泊施設を設計。
集落の通りをヴァージンロードにしたり、様々な規模の式に対応可能な設計でしたが、もう少し場所性を読み取った提案があると面白くなったのかなー。


最後にスケ!
『モノとヒトの集積・交換・移動―グローバル・ツーリズムの拠点としての築地市場の再生―』

↑実は話し始めると止まらないスケさん

東京築地。ここは言わずもがな鮮魚卸売り市場であるが、全国から集まってきた魚たちはまず選別され、次に加工され、最後にトラックに乗って出荷される。この三段ステップがあの特徴的な構造体の、海側から陸側へと順に展開されていく仕組みが面白い(青井研OG宮戸さんの論文を参照)。
築地が移転した後に、この構造体を産業遺産として残し、三段ステップを比喩的に置き換えて観光客が一同に介する巨大な拠点にしてやろうという提案。観光についてのシニカルなテーマでした。
この巨大な敷地と、キャラに似合わないテーマで大分悩んでいた様子でしたが、設計手法として土木的なスケールを導入することで糸口が見えてきました。
都心部最後の大型遊休地をどう活用するのか、タイムリーなテーマですよね。


以上、2014年度の四年生達の成果でしたー。
みんなお疲れ様でした。春からの頑張りにも期待してます。


M2 くらいし