サブゼミB班 2週目

サブゼミB班 2週目

遅くなって申し訳ありません!
5月29日サブゼミB班の2回目の発表の報告です。

課題図書:多田富雄『免疫の意味論』(1993、青土舎)
発表者は、石榑、林、城、吉田、でした。

前回の発表では、『免疫の意味論』の 1章から5章までを紹介しました。ちょっと復習です。

免疫系は、「自己」の中に浸入した「非自己」区別して排除し、個体のアイデンティティを決定する。
・・・なんだか実感が湧きませんが、免疫細胞のひとつになった気持ちになるとわかりやすいかもしれません。体内の世界には様々な種類の細胞やら物質やらがあるけれど、あの人は味方(自己)かな?敵(非自己)かな?っていうのを判断しなきゃいけない。

ではどうやって「自己」と「非自己」を認識しているのか。ここでは免疫細胞が2つ登場します。
まず、マクロファージという細胞が出会ったものをとにかく食べます。すべての細胞は「自己」の旗印をもっているのですが、マクロファージが「非自己」を食べた場合、「非自己」の旗印が現れます。それをT細胞が認識するのです。「自己」との差異によってのみ「非自己」を認識します。認識すると、指示を出して「非自己」を排除しようとします。

T細胞からの指示をB細胞という細胞が受け取ります。抗原は未知のものなのにどうやって備えているかというと、B細胞は抗体(抗原を無効にする物質)を膨大なバリエーションを持って準備しているそうです。抗原にぴったり合う抗体を後から作るのではなく、あらかじめ膨大な抗体のネットワークの平衡状態を構成し、その中から抗原にぴったり合うものを大量生産して抗原を押さえ込みます。動的平衡をもつしくみなどの議論が展開されました。

細胞間のコミュニケーションにはインターロイキンという物質が使われています。インターロイキンは、ひとつの種類につきたくさんの言葉を持っていて、どの言葉を読み取るかというのをコンテクストから判断します。
コンテクストを読み取って適応した結果が、新たなコンテクストになり、またそれに適応する・・・こういう自己言及的なシステムで免疫系は成り立っています。このシステムを超システム(スーパーシステム)と呼びます。


ここからやっと今回の報告です!長くなってすみません。

1.「チューブとしての人間」
人間は、消化管という巨大な一本のチューブである、という見方ができます。チューブの外は当然外部ですが、チューブ本体を内部とするならば、チューブの内側は外部と捉えることもできます。実際、解剖学では、消化管(チューブの内側)は外部なのだそうです。食物・空気…毎日何リットルもの外界が私たちの中を通過します。
免疫系は、「非自己」を徹底的に排除しますが、生きていくためには外界(非自己)と共存もしなければなりません。チューブの内側という環境でで安全に外界と接触することで、免疫系は寛容をつくって「非自己」と共存し、また「非自己」を知ることでその侵入時の備えをしているのです。体内に常に外部を持っているというのが驚きでした。

2.「超システムの崩壊」
免疫系を成り立たせる超システムは、自己言及であるが故に簡単に崩壊してしまう危険も併せ持っています。超システム崩壊の例として、エイズと老化について紹介しました。

エイズは、「自己」のふりをして免疫系を乗っ取ってしまいます。「自己」を乗っ取られて「非自己」を排除できなくなるという恐ろしい病気ですね。

老化はというと、「自己」「非自己」を区別できない状態に陥ってしまうのです。「自己」を攻撃してしまったり、「非自己」を排除できなかったりする混乱状態になって、様々な老化現象が現れます。

指示者もマスタープランもなく、自分で自分を作り出していく高度なシステムなはずが、それが裏目に出て負のサイクルに陥ってしまう危険も内包しているんですね。

3.「超システムの例」
超システムは免疫系だけのシステムではなく、いろいろなものに当てはまるのではないでしょうか。
言語、経済、都市、・・・確かに指示者が居るわけではなく、自己言及を繰り返しながら目的無く発達してしまいます。ただし、単純に超システムだと言い切れないところもありますし、3週目につながっていく話題でした。

4.「創発
ティーブン・ジョンソン著『創発』(2004、ソフトバンククリエイティブ)という本の「創発」という考え方が超システムにとても近いとのことで、超システムの補足として紹介されました。たとえば、アリのコロニーはとても社会的に行動しているように見えますが、個々のアリが賢い判断を下しているわけではなく、アリは単純な要素としてしか働きません。さらに、女王アリが指示者であるというイメージが強いですが、女王アリもまた、子孫を残す要素として行動しているだけで、何も指示などはしません。それぞれが要素として単純にコンテクストに応じ、自己言及を繰り返すことによって、巣を作ったり行列をつくって食べ物を運んだりしているのです。

以上が今回の内容でした。超システムというものがあらゆるものに当てはまるのではないか、ということを様々な場面で考えさせられそうです。3週目では、超システムのより発展した議論をしていきたいと思います!

B4 吉田