サブゼミB班 「エンジニアリング以前/以後」 第1回発表

B4吉野です。
5/16にB班「エンジニアリング以前/以後」について発表をしました。

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概要。
この論文は、デザインはデザイナーの直感と個人性・芸術性では扱えきれない領域にあるとした上で、いかにデザインの問題を解き形をつくるのかというプロセスについて述べている。
デザインとは”形”と”コンテクスト”(形に対する要求)を適合させる努力であり、その適合の良さは”アンサンブル”(形とそのコンテクストから生まれる調和のとれた全体)が望み通りの特性を持つことで決まると言う。
そしてその発見の仕方は不適合の修正であり、つまりデザインとはアンサンブルの中に不適合が無くなるような秩序を創造するプロセスであるとする。

このプロセスを実践的・効率的に進めるために、アレグザンダーはすべての要求の中から部分的なつながりを持つものを独立させ”サブシステム”とした。デザインは同等の要求を複数含むサブシステムの集合からなる。
さらに彼は文化をa:「無自覚である」文化とb:「自覚されている」文化に分ける。これはB班のテーマと合わせて言えばa→「エンジニアリング以前」、b→「エンジニアリング以後」にあたる。(一概にそうとも言えないと思いますが、とりあえず。。。)

無自覚な文化の特徴として挙げられるのは、伝統と直接性である。
伝統は、不適合が生じたサブシステム以外のサブシステムに粘りを与え、修正の際変化をしないようにする。また形の正しさ(正当性)などは問題としない。
直接性とは、人と形の特別な接触の親密さを表す。不適合が生じた際、常に身近にある素材で修正ができ欠陥に対する絶え間ない再調整と改良を繰り返す。
無自覚な文化では、負のフィードバックしか起こらない。そこではものを発展させるという思考はなく、ものの不適合に対する適合と動的平衡を保つ作業をしているのである。
一方自覚された文化では、それらは消失している。
文化と平衡を保つことができなくなり、デザインにおいて同時に集めなければならない要素は膨大であるのでその成功は見込めない。現状では、自覚されたデザインの作業に、問題とそれを解くために工夫された手段との間の構造的な対応が存在しない。

アレグザンダーはこの自覚された文化の問題点を挙げ、「環境という、人間諸科学と物理的な工学とが複雑にからみあってはじめてデザインしうる対象に、正面きってアプローチする方法を企画した(『建築の解体:磯崎新』)」といえる。

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最近の建築界でも同じようなことが議論されていて、この論文が現代において再考されているようです。構法計画学や藤村龍至氏の批判的工学主義・超線形設計プロセスなど、意識された文化における論理的な設計構造を確立しようとする動きが、他の多くの建築手法がありながらも目立ちます。アーキテクチュア2.0と表現される現代において、捉えにくい膨大な情報をデザインに還元・昇華させていくには、アレグザンダーの推進した建築デザインの論理的思考を21世紀情報社会版にアップデートする必要があるようです。

『形の合成に関するノート』の文章自体については、抽象的で理解が難しかったという印象。元々言葉で説明するのが苦手な僕にとって、分からないことを説明する言葉選びにも苦心してしまいました。汗
ただ、テーマとしては個人的に興味のあるヴァナキュラー建築の現代に対する位置づけのようなものを発見できて、これからの僕の建築ライフにいい影響を与えてくれた書籍であろうと実感しています。

もっと書きたいことがあるのですが、文章量と文章力と記憶力の都合により自重します。。。

次回は1回目の発表からヴァナキュラー建築を捉え、発表します。
無自覚な文化に触れて、楽しみながら考えていきたいと思います。

B4 あゆむ