トウキョウ建築コレクション プロジェクト展を終えて

昨日今日で「トウキョウ建築コレクション」(TKC)のプロジェクト展スタジオトークと座談会が行われました。

青井研究室も「台南都市サーベイ2010」を出展しました。
サーベイのメンバーは、石榑督和、服部征起、肥後伯子、白佐立、渡邊映介の5名でした。TKCでの発表の石榑さんと服部さんお疲れ様でした。

「台南都市サーベイ2010」
台南は、台湾の都市の中で最も古い都市で、古くからある巷とその巷沿いに建築の正面が建ち並び、建物の粒は、共有壁が連続する風景の間を充填するように存在していた。その上に、日本植民地時代の市区改正によって、グリッド状の幹線道路が、既存の都市組織の文脈とは関係なく計画されている。今回のサーベイでは、市区改正のときに、切り裂かれた都市の傷口が、どのように反応し、自己再生しているのかを、具体的な反応の事例を採集することで、台南の建築的な様式が見えてくるのではないかというものでした。
以下に出展時のボードを示す。






以下、スタジオトークと座談会の様子





職能議論について少し感想を書かせていただきます。話の正誤についての至らない点はご容赦ください。。。

今回の全体のテーマは「建築家とは何か?」ということで、プロジェクト展でも建築家の職能についての議論が、スタジオトークと座談会を通して行われていた。ほとんどのプロジェクトが、コミュニティデザインについてであり、山崎亮氏の発言を引用すれば、人の関係性をどうつなげるか、縁の再構築をどのように行っていくのかということでした。建築学生が地域に対してどのような試みをし、地域住民がどのように反応したのかというものが多かった。
それぞれのプロジェクトに対しての説明は割愛させていただきますが、全体を通しての感想としては、不確定なコミュニティに対する感想や地域住民との対話からの印象、建築学生の地域に対する立ち位置、計画の余白が地域の住民を引き出す鍵、プロジェクトのサスティナビリティーなど、非常に重要な議論であるが、抽象的な議論で、もうひとつ前に必要なフェイズがあったと思われる。

今は確立されていない建築家の職能としてのコミュニティデザインを考えるとき、確実に必要になっていくのは、「金とデザイン」である。また、「台南都市サーベイ2010」は、建築家なしの建築を見ているため、実際の計画については、投げている部分がある。そのためか、他のものと比べて、非常に異色なものに見えてしまい、議論の中心にはあまり上がってこなかった。これも問題で、前提としてあるべきコミュニティの調査と実作との整合性という部分での議論が必要だったと思われる。この整合性とは、たとえば、信楽人の方と話す機会があったのだが、予算のなかで、地域の大工さんや工務店の方とどのようなやり取りで、材料や構法を決定したのかを具体的な数値による非常に具体的なレベルの話である。
座談会の終盤で、山崎亮氏の実際の事業における明細を見せていただきたいという話が出ていたが、建築をつくらない建築家の明細はどのようになっているのか、それは非常に重要で、他にも「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」(現代GP)という文部科学省の支援によって、学生の地域活性に対する計画に具体性をもたせるものなど、このような話を具体的な指標として、アーカイブしていければ、建築家の職能の広がりを明確に捉えられるように思います。また、プロジェクト展の社会化は、この金とデザインのケース・スタディによって、一般の建築を知らない人も含めたものになるのではないでしょうか。これはTKCの存在の意義にもつながると考えます。

この感想について、何か助言がいただけるとありがたいです。

村上