高山にはスキマがない。古建築実習その1。

高山市の伝建郡周辺の街を歩いた。伝建群ではなくあくまで周辺。高山の街にはスキマがない。一般的に現代では施行やメンテナンスの問題から、町家が更新されると隣棟とに間に微細なスキマを開けるが、高山では左写真のような場所だけでなく木造意外の構法で更新されている場所もスキマをつくっていない。
日本の多くの都市に広がるスキマには室外機が置かれたりするものの、ほぼ積極的な利用はされていない。都市にスキマを生む直接的要因は、明治23年に制定された民法234条の外壁を隣棟より50cm離すという規定であろう。しかし、建築基準法65条では耐火構造にすることで接境建築を認めている。*1 *2 清水氏が指摘するとおり「町家がスキマなく建つことには、現代の住宅ではあまり考えなくよい建築上の問題が存在している。たとえば、密着する壁をいかに施行するか。隣棟から突出する屋根の螻羽はいかに扱うべきか。雨水はどちらの家の屋根で処理するのか。建物のかたちは、この時点ですでに多くが規定される。町家に形式上のルールがあることは、このスキマなく建つことにも理由の一端が」あるだろう。*3 軸組でスキマなく建てた際、上のような相隣関係を考えなければならないが故に、スキマを生じた都市よりも個々の建物同士の関係が強い。
とは言うものの、都市全体にスキマが広がる東京を考える時に、そこには相隣関係が存在しないと言ってしまうのは、短絡的すぎるだろう。そこには、微弱ではあるが相隣関係で出来上がったかたちが必ず存在する。東京を考える際、それを丁寧に考えることが必要なのではないか。
建物と建物の間、あるいは境界を考えることは、都市を考えるうえで極めて重要なポイントだ。もちろん同時に建物と土地の関係も深く考える必要がある。

GURE

*1:清水重敦「都市に生まれたスキマ」『住宅特集』2009年12月号

*2:塚本由晴「土地は住まいに先行するか?(なぜ敷地いっぱいに建ててはいけないのか?)」『すまいろん』59号、2001、住宅研究総合財団

*3:このはなしをさらに詳しく説明したものとして、青井哲人「隙間なく建てふさぐ二棟の町屋。低い方の屋根は切り取るの?」(『すまいろん』59号、2001、住宅研究総合財団)がある。