サブゼミB班 第3回

吉野です。

遅くなり申し訳ありません。B班3回目の発表についての報告です。

今回はジョン・フィッチェン著『機械化以前の建設技術としくみ』を読み、建設行為が人の手と工夫で行われていた時代の建設技術を紹介し、さらにそれらを踏まえ、現代の建設過程でなんらかの共通点があるものを挙げました。機械化以前と現在を結びつけることで完成品の消費をする、つくる世界の見えない現代において、つくる過程を表層化しその技術と意義を学びます。

本文では主に建造家と呼ばれる職人が登場します。
機械化以前の建設現場では建造家が建設において重要な役割を担います。かれらは建物をつくる過程で、建設資材運搬のためのアクセス道路建造や建物の建設方法、さらには換気や事故防止などの安全性の確保を含む現場の指揮を行います。自然の状況を認識しそれが提供している可能性を推察し、判断が正確で、手段を実際的で経済的に行う能力が問われました。
ここで建造家はどこまで建築のデザインに介入できるのか、という疑問が挙がります。シリアのパルミラ遺跡ナボ神殿ではまぐさを柱に乗せる為につくられた足場が建設後も残されている、というように施工の痕跡が建築物に残っている例があります。当時のデザイン設計と実務的事柄がどのように絡まり合っていたのかということは、設計にかかわる身としてとても面白く今後も学びたいテーマです。

シリアのパルミラ遺跡ナボ神殿[http://www.hoshiuta.com/main/travel/005_syria-jordan/02/main_02.html]より(柱にある突起物に注目です)


次に現代の例を発表しました。主なものを挙げます。
中村拓志Lanvin Boutique Ginza>:サッシのない窓を造船職人である高橋工業に依頼 「冷やし嵌め」という技術
現代技術は効率ばかりを重視している。構造、防水、仕上げ、サッシなどの機能は細分化されて、分業されるがこのシンプルさは新鮮であると中村氏は述べています。


[NAPホームページ]より
・ 403 architect<三展の格子/渥美の床>:廃棄されるはずの梁、柱、根太といった構成部分を組み替え、別の材として使う
都市をストックとみなし、流通と生産の仕組みを組み替えようとしています。


[JA 86 SUMMER, 2012 新世代建築家からの提起]より
森田一弥:左官/マイノリティー・インターナショナル・・・国際的な広がりはあるけれど少数派ではない、しかしある土地の事情に合っていて、独特の発展をしている技術のことを言います。


[雑口罵乱4月号]より
竹中工務店<ストロングビルディング>:超低予算の駐車場であるので、徹底的に要素をそぎ落とし建設されました。意匠、構造、設備、施工という職能の解体と再構築ということを竹中工務店は目指しています。柱はクレーンと手作業で行い、一本あたり約5分で建つという早業です。


[新建築2006年04月号]より
403architectは、古くなった建物を資材として利用し、生産の場において復活させます。このように既存のものからプールとマッチングの関係性を作り上げていく手法は、過去コロッセオでも行われたとても興味深い事例です。
今流行しているDIYの材料が製品の木材等を使うのではなく、都市のストックから提供されれば、流通システムとしても、つくる側にとっても面白いことが起こるのではと思います。それがさらに建築において主流の一つとなった場合、なにが起こるのかということは今後も注目したいです。


サブゼミを通して「設計する過程、つくる過程」について学び、興味が沸きました。アイディアを実践したもの勝ちとも言える現在の状況で、それぞれの場面でなにに向かっているのか、どう理論化、体系化できるかを常に意識することがとても大切であるというお話をいただきました。公共施設の建設でも、復興計画でも住民と「一緒につくっていく」機会が増えています。つまりだれでもつくる過程に関わる場面が多くなります。それ(に限らず)がただの現象に落ち着くこと無く、「みらいのなにか」につながることを忘れずに設計者として関わっていけたらと思いました。

サブゼミ、とても刺激的でした。

吉野