サブゼミ 創発班3回目

アップが遅くなりまして、申し訳ございません。
7月13日のサブゼミレポートです。
創発班3回目の発表ということで、今回は具体的な建築家を比較して建築に創発的な発想がどのように表れているかをまとめました。
前回までとは違って今回はもっと議論がしたい…というひそかな狙いもありつつ、今回取り上げたのは平田晃久、中村拓志塚本由晴の三人です。

まずは平田晃久の紹介。彼の創発的発想の着眼点は「生成原理」で人間も建築も生命の一部と考えている巨視的なフレームをもっています。建築とは自然と調和し相互作用することで初めて高次のまとまりを形成する「からまりしろ」をつくること、そしてもっと自然に介入していくべきだ、と考えています。事例が少なく、ほとんどがコンペ案の紹介でしたが写真を出しながら彼が考えた「からまりしろ」の建築を見た時、創発班では、コンセプトの段階では創発的発想は理解出来るけれど、結論のかたちに対して「どこが創発?」と何度も議論になりました。実際のゼミでは「人とモノが両方同時にエージェントとなり得るのか?」という議論が展開されました。

次に中村拓志の紹介。彼の着眼点は「個人の身体」。彼は建築を皮膚や服地の少し先にある存在として設計しようとしています。彼は人の所作・ふるまいを観察し、個人のふるまいが日常生活の中で何度も反復される中での空間との相互作用・共振をかたちにすることよってボトムアップ型の公共空間をつくりたい、と考え「微視」という言葉を使っています。平田晃久は生成原理からできるカタチに重点を置いていますが、中村拓志の場合は生成原理をつくるということに注目しているというのが違いです。

最後に塚本由晴。事例や資料も多くレジュメも3枚になりました。彼の着眼点としては「ふるまい」「環境ユニット」「用・強・デライトフル」「建築の世代」「オン/オフ」「サブディバーバン」「ヴォイド・メタボリズム」というキーワードが上げられました。東京都市は第1世代(戦前)、第2世代(戦後)、第3世代(バブル)の住宅で作られており、2000年以降に作られたものは第4世代とされ現代自分が設計しているのはこれにあたる。現代の建築家は住宅という粒の更新を行っているのだ、そして同時に発生する隙間(ヴォイド)の意味を見出すことで建物の在り方を変えていきたい、ということを様々な資料で述べていました。中村拓志は対談で塚本由晴に影響を受けている、といっていましたが「ふるまい」への着目は同じであっても前者のエージェントは「個人」後者は「人間」であることから、建築への落とし込み方には違いが現れています。

この三人を比較した議論の中では、創発班の議論ではあまり触れられなかった「治具」が予想外に展開されました。「治具」の読み替えによる家具と建築の関係…を建築に取り込むのか?それともある程度まで引き寄せるだけなのか?ということも議論しました。
創発班の時はメンバーの大部分から批判を浴びていた(笑)平田晃久も職能という視点から見ると純粋に建築家として正しい、と思え、創発が丁寧に表現されている、と支持されていた中村拓志はフレームを狭めているから意外とつまらない、という見方も生まれました。
三回の発表を通じて「創発って?」という疑問に対し、都市や社会へのつながり方・建築家の実際の事例などアプローチを重ねて議論をすることで、個人的にかたちの曖昧だったものが掴めたような気がします。
もう一回『創発』読み返したら、5月とは全く違う感想を抱くだろうなと思います。

前期も終わりがもう目の前です…夏バテには気をつけて最後のゼミまでがんばりましょう!!

B4 河合