曙橋の皮とあんこ


今月から始めたアルバイト先が曙橋から徒歩数分の靖国通り沿いにある。この会社のビルはRC造で6階建て。靖国通りに沿って建つビルのほとんどが6階以上である。東京では街区の周りの幹線道路に沿って中高層の耐火建築物が建ち並び、それによって囲まれた街区の内側を木造建築物が占める「(硬い)皮と(柔らかい)あんこ」のような構造を見ることができる。ぼくの、アルバイト先はまさにこの「皮」をなす建築物の一つである。


お昼になると、靖国通り沿いのビルで働くスーツ姿のサラリーマンが街に溢れてくる。もちろん靖国通りを歩きながら飲食店や、コンビニに入る人も居るが、かなりの人がビルの間の路地から街の裏側へと歩いていく。つまり、「あんこ」の中に入っていく。「あんこ」を構成する組織の多くは小さな木造建築物で、これが満員電車の中の人間のように小さな隙間をあけながらひしめき合っている。更地にされ駐車場になっている土地もあるが、かなり高密に住宅が建ち並んでいる。この小さな粒たちのいくつかは現在も一階でお店を営んでおり、その多くが飲食店やお弁当屋さんであるために、多くのサラリーマンが「あんこ」の中に入ってくる。この路地は開放的である。住むためだけの機能に特化した住宅でできた郊外の住宅地とは違い、この街の(あんこの)住宅は「住むためだけの場所」として完結した構造をなしていない。また、「皮」の内側を住宅群が高密に占めていることによる建物の接道性の高さも影響しているだろう。


「皮」を形成する耐火建築物は物質としても硬いのだが、入っているプログラム(会社であること)の影響もあり、建ち上がった建築はその後形態変化が起きにくい。
一方「あんこ」は柔らかい。多くが木造なのだから耐火建築物でできた「皮」より材料が柔らかいのだが、それだけでなく、多くが住宅であることが重要である。住むということは、その場が使いこなされ、新たな空間が生産されるということだ。「あんこ」空間は住みこなされ、日々小さな変化が加えられているのだ。





「あんこ」の中にあった、八百屋さんと奇怪な建物。それぞれの住みこなしでできてきたのだろう。
2階にある扉。
屋根から飛び出した部分につくベランダとそれを支える棒。














GURE